2021-03-09

【狩猟のこぼれ話】出猟71日でやっとイノシシが獲れた。罠猟で、はじめてイノシシを獲るまで。

こんにちは。山と川と暮らし(@yamakawakurashi)です。

先日、出猟(罠をかけてから)71日でやっとイノシシが獲れました。
実は私、銃所持歴もうすぐ9年になりますが、罠をかけたことはなかったんです。

今シーズン、狩猟人生の中ではじめての罠猟。やっと獲れたイノシシのことを備忘録として残します。

※山と川と暮らしは専門家ではないので「自分でやってみたことを元とした経験談や考え方」の共有になります。今までの捕獲経験として、北海道にいた3年間でシカ13頭、エゾライチョウ1羽、ヒヨドリ2羽・現住所にてヒヨドリ1羽…いずれも銃猟にて。罠は今シーズン初挑戦。

※捕獲の写真、解体の描写があります。グロテスクにならないよう配慮はしていますが、苦手な方はごめんなさい。

かかったのは小さなウリボウ

獲れた!と言ってもかかったのは、10kgに満たないウリボウでした。

罠をかけて71日

11月15日から猟期がはじまり、仕事の都合がつかず結局罠の設置に行けたのが、12月に入ってからでした。

設置をしたら毎日見回りに行かねばなりません。設置したのは職場の近く、酪農家さんが1軒と周囲には牧草地と畑が広がり、川と川沿いにつながる森がある場所です。

最初は職場から歩いて行ける距離に2つかけてみました。
かかると時間がかかってしまうので、仕事の日は前日の見回りの時に空落ちさせて仕事終わりに再びセットしに行くことに。

空落ちさせた(あらかじめ罠を作動させ、かからないようにした)くくり罠

(私の仕事事情は…宿泊業で働いています。前々から働き方を変えたくて(接客業苦手)出勤日数を減らすよう調整してもらいました。それに加え、緊急事態宣言が出てからより休みが増え、結果として猟期中は数えるほどしか出勤していません。)

ビギナーズラックか、かけて3日目にキツネがかかり、ドキドキしながら放獣。

その数日後、罠から50m離れた場所にイノシシの掘り返し跡とフンが大量に。そこに罠を移動するも、その後ぱったりと音沙汰なし。

もっと出没頻度が高そうな場所を探してポイント変更。

捕獲を具体的に意識したら

今まで通勤路の牧草地が掘り起こされていたり、なんならイノシシに出会うこともしばしばあって。酪農家さんもいることだし、すぐに獲れるだろうとたかをくくっていました。
(酪農家さんがいる=牛用のサイレージ、堆肥のミミズ=食べ物がある=定期的に食べに来る?)

牧草地を掘り起こしてミミズを探すイノシシ(2019年5月9日)

実際に始めてみたら、これがなかなかかからない。

使っているのは、くくり罠。お弁当箱くらいの踏み板にワイヤーをかけて、踏んだらバネがはじけて足首をワイヤーで締めるもの。

▲ アマゾンに近いものがあった。今、罠ってアマゾンで買えるのね…。

自由に歩き回れる森の中でお弁当箱を踏ませるって、結構すごいことだなと改めて実感。

しかも、よく思い出してみれば、イノシシに出会った記憶は1年の間で数回。そもそも普段あまり出会わないものだから「よく見る」感覚になっているけど、たった年数回。…獲れる気がしなくなってきた。

「どうせかからないし」と思って、出勤日でも空落ちさせずかけっぱなしにすることにしました。

ポイント変更

「どうせかからないし」とは言え、ほかの動物がかかってしまうと困るので、見回りは休めません。仕事の日は朝、罠を見てから出勤します。

最初に罠をかけていた場所は、こんなところ。

▲ 樹液に毛が残っていたり、すぐ下に足跡があったりで設置場所に選定(12月4日)

前述の通りかけてすぐは気配があったものの、1ヶ月ほど経過したらぱったり。季節によって出やすい場所が微妙に違うんだろうな。

変更した場所は、酪農家さんの川向こう。歩いて獣道を探したところ、川へ降りる太い獣道を発見。その先には、もぐもぐごはん(サイレージ)を食べる牛たちが。

どうやら、ごはんのおこぼれをもらいに通う動物がいるようです。

罠の見回りに行くと、不思議そうにこちらを見つめる牛たち。

凍結地面は足跡が残りにくい

くくり罠は弁当箱を踏ませる必要があるので、よく通る道にかけます。よく通るので、笹原ならそこだけ笹が両サイドに傾いていたり、斜面なら段差ができて足が滑らないようになっていたり。引きで見ると小さな道になっているのが獣道です。

実際に罠をかけた場所。傾斜をへつるように獣道が続いています(桃色線の下)

これ、歩きやすいので人間も思わず使っちゃうんです(山菜採りで山に入る方は経験があると思います)。

動物も一緒で、歩きやすいところを歩きたい。なので、キツネや猫などいろんな動物が通ります。でも、かかって欲しいのはシカかイノシシ。

「どんな動物が通る道なのか」を判別するためには足跡・フンなど痕跡を見つけること。場所決めの段階では雪がなく、獣道にイノシシのフンが落ちていたので「これはいける」と選びました。

でも、フンてこの辺では気温が低いので冷凍保存されたみたいにしばらく残っているんですよね…。しかも気温が上がると表面が溶けてしっとりと、まるで「出したて!」みたいなオーラをまとうのもやっかいで。すごい困る。

しばらくして、雪が降って。雪があると足跡が残りやすくなります。

雪でわかった、イノシシの親子が週1くらいで通っている

今年は雪が少なく、雪かきをするくらい積もったのは1月末に20cmほど降ったきり。その雪は解けずに半月ほど残っていましたが、表面はカチカチ。雪が解けて地面が出てきても、地面も凍結していてカチカチ。

沈む雪、沈む土には足跡が残りますが、凍結した雪や地面には足跡が残りにくい。獲物が出てこなくなったのか、足跡が残っていないだけなのかがわかりません。

ここの先輩方も「地面が凍ると(掘れないので)罠を設置できない」とか「雪が積もると(罠ごと埋まってしまうので)罠が作動しなくなる」とか、そういえばそんなことを言ってました。一概にくくり罠といっても、地域の気候や動物の生息数によって適したやり方があるんだろうと思います。奥が深い。

ニアミス

足跡が残りにくい状況ながら、はっきりと「あとちょっとだったのに!」と認識できたことが一度だけありました。

まとまった雪が降った3日後、罠をかけた獣道にイノシシの足跡が。

赤枠が弁当箱の位置。右と左、逆の足だったらかかっていたかもしれない…1月28日

この場所、間違ってなかった!雪に埋もれた状態では罠が作動してくれるのか不安だったので、雪から掘り起こして再設置。でも、その後イノシシがこの場所を通る気配がない。その代わりにキツネはよく通る道なようで…。

人生2度目のキツネ。2月8日

狩猟期間が終わる

またキツネがかかったり、罠を3つに増やしたりしつつ、猟期は残りわずか。「結局獲れなかったか…」と思っていると、久しぶりに共猟会に行った先で「有害駆除の許可が下りるから札、掛け替えて継続して良いぞ」とのこと。

本来、狩猟を行える期間は決まっていて、本州では11月15日~2月15日が一般的(地域によって差があります)。それ以外の期間は、各市町村から許可が下りた鳥獣に限り捕獲ができます(有害駆除)。

この地域では、シカ・イノシシを対象に罠猟に限り3月いっぱいまで捕獲許可が出ました。

(札とは、この罠は誰のものかを示すもので罠の周辺に掲示、狩猟用と有害用があるので掛け替える必要があります)

目印のピンクのテープとともに、木についている白い長方形のがそれです

先輩猟師さんたちも今年は獲れていないらしく、「出てないから今回は有害やらねえ」という方もいて。出てはいるけどかからないのは、私の技術不足なんだろうな。

雨降りで動きが活発に?

雨が降ると気温は低いので、地面はゆるく足跡も残りやすくなります。

2月中旬に雨が降った翌朝、足跡がたくさんあり、びっくりしました。

2月15日

雨だから活発に動いたのか、

いつもと変わらないけど、雨だから足跡が残りやすかったのか…

それとも両方?

3月5日雨が降る

午後から夜にかけて雨、翌朝いつも通り見回りへ。のんびり山の裾野がきれいだななんて写真を撮ったりして。

車から降りて200mほど歩いた場所にかけてあるけど、向かう途中でもう足跡がたくさん。

「今日、なんか違うぞ」と思ったら、かかっていました。

止め刺し・解体

急いで家に戻って、解体の道具を抱え現場に戻って。

止め刺しをして、

罠から外して平らな場所へ運びます。私でも片手でひょいと持ち上げられる重さ。

秋生まれの子だろうか?週1通っていたのあの子だろうか?
そういえば、最近子どもの足跡しかない日があったっけ。

いろいろ思いながらすぐ近くの平らな場所で解体を始めました。

関節にナイフを入れないとどう頑張っても切れない場所があったり、骨に沿ってナイフを入れたくても肉に覆われて骨が見えなかったり。解体は、骨格や体の構造をある程度把握した上でやらないと手際が悪くなります。

しばらく間が空くと忘れるので、「あれ、こうだっけ…?」と思い出しながら作業します。こんなに小さいサイズでも2時間くらいかけてやっと枝肉になりました。

途中、ミソサザイが元気にさえずって、ヒヨドリがにぎやかに頭上を飛んで、どこからともなくカラスが様子をうかがっていたりして。

罠道具を入れているトートバッグにお肉も皮も入ってしまう。お肉になったイノシシと道具をまとめて、肩にかけ斜面を登る。罠をかけ直して帰宅。

帰宅後、キッチンで骨を外す

家に戻ってもまだやることはいっぱい。

ハツとレバーはこの日の夕飯に。レバニラにしよう。水にさらして血を抜きます。

枝肉は、骨を外していきます。

これも1時間くらいかかったかな。

7袋になりました。冷凍してちょっとずつ食べます。

体がバキバキ、疲労感が…

一段落ついて、レバニラ用のニラを買いに近所の八百屋さんへ。
(田舎なので、17時には閉まっちゃうんです)
体が、だるい。あんな小さなイノシシだったのに、どっと疲れた自分がいる。

これが、成獣となると大ばらし(枝肉にするまで)で一日がかり。骨を抜く作業は翌日に持ち越しすることもよくあります。フルタイムで働いて、休みの日にこの作業をするなんて体力が持たない。働き方を変えたいと思ったのは、そういう理由もあったり(今シーズンは全然獲れなかったので、体力有り余っていましたが)。

家にある一番大きな鍋“金鍋”に外した骨が全て入ってしまう。犬のおやつにちょうど良いサイズ。我が家にはこのサイズがちょうどいいのかもしれない。

毛皮は鞣す予定

毛皮はこれから毛皮なめしにしようと思っていて。皮の内側の腐りやすい脂肪や肉を取る作業、これも肩が凝る&時間がかかる作業です。

大変だけど、これはこれでいろいろ発見があって楽しいのです。

皮の様子はまた後日報告します。

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