2021-01-25

ジビエをもらったけど、どうしたらいいかわからない人へ、狩猟で得たお肉の処理方法

田舎に住んでいると、知り合いの知り合いから伝言リレーのように野生動物のお肉がまわってくることがあります。それも、かたまりのお肉

かく言う私も、1頭丸ごとイノシシやシカをさばいた後は、職場の方々へ配ったり、実家へ持って行ったり、二人と1匹の家庭では消費しきれない(冷蔵庫に入らない)分は「ご自由にどうぞ」と知人に配ります。

もらってもらえると助かるのですが、ほとんどの方がジビエなんて料理したことない…
もしくは、食べたことがあるけどあまりいい印象を持っていない…ので、食べ方を添えないともらってもらえません

「そんなに構えないで、食べてみてよ」という思いを込めて、シカやイノシシなどの野生動物のお肉(ジビエ)の食べ方と処理方法を説明します。

※山と川と暮らしは前職でシカをたくさん解体するおしごとをしていたので、基本的にシカについての印象のお話になります。

※個人の経験をもとにした方法なのでやってみたけど「おいしくなかった」「おなかを下した」などの責任はとれません。あくまで自己責任でおねがいします。

ジビエとは?

ジビエとは、野生動物のお肉のこと
最近では、ジビエ料理を出すお店も増えてたしネットでお肉を買えるようにもなりました。それでも、狩猟で捕獲された動物のほどんどは流通にまわることなく自家消費されます。

1頭のシカから取れるお肉は全体の約3割程度。100kgのシカから非食部の皮や骨などをのぞくとだいたい30kgほどになります。自家消費といいつつ、1家庭では食べきれないので知り合いという知り合いに配ることが多いです。

獲れた季節や個体によって差がある

もともと食べることを目的に、おいしくなるように飼育管理されている家畜とちがって、ジビエは個体差がかなりあります。

【 年齢 】

羊のお肉の場合、1歳以上をマトン、1歳未満をラムと呼び、ラムはマトンと比べ色が淡く、肉質はやわらかく、においも少ないと言われています。野生動物も若い個体の方が、やわらかくさっぱりしている印象があります。ジンギスカンのラムとマトンの味が異なるように、立派な角のオスと子どもでは同じシカとはいえ味が違うんです。

【 性別 】

性別も重要。メスよりオスの方が独特な風味があり、筋肉質(かたい)印象です。(0歳や1歳だとそれほど気にならないです)
とくに立派な角のオスジカのネック(首回り)は座布団みたいにしっかりしてて、筋肉ムキムキな印象。

【 時期 】

獲れる時期に左右されるのは、脂肪のつき具合。
シカやイノシシは冬眠をしませんが、冬にそなえて秋口にたくさん脂肪をたくわえます。春頃貯金を使い果たし、あたたかくなりごはんをたくさん食べられるようになると徐々に脂肪が戻ってきます。

余談として…シカの場合、10~11月ごろが交尾期で6月に出産します。交尾期の2歳以上のオスはオスくさいというか、独特なにおいがあります。(丁寧に解体すれば肉にはあまり影響ないと思いますが)

おなじく出産後のメスは乳くさくなるという人もいますが、解体するときに気をつければそんなに気にならないです。

どこの部位か

牛すじ肉といえば、おでんに入ったほろほろに煮込まれたものを思い出しますよね。スーパーでよく見るお肉には「もも肉」や「むね肉」、焼き肉屋さんに行けば「さがり」「カルビ」「タン」などどこの部位なのか名前がついています。

部位ごとにやわらかさや脂ののり具合がちがうので、同じ牛肉でも部位によって食感が異なります。牛すじ肉は焼き肉ではあまり見かけませんよね。ジビエも同じく「焼く」一択ではなく、部位の性質を理解して最適な料理にしてあげるとおいしくいただけます。

肉の部位ごとの性質はシカ→牛肉、イノシシ→豚肉とほとんど変わらないと思います。

大切なのは、お肉の情報を知ること

肉のかたまりをもらったら、どんなお肉なのか確認を忘れずに。確認することはこちら。

  1. なんの肉?(シカ肉、イノシシ肉、クマ肉…)
  2. 部位はどこ?(モモ、前足、ロース、バラ、ネック…)
  3. どれくらいの大きさだった?(オス、メス、こども…)

猟師さんの情報は、話が大きくなりがちだったり(50kgくらいのシカを100kgくらいにしゃべったり)、解体もほとんど自己流なのでどこがどの部位なのかよくわかっていない人も多かったり…。あげる側になる人は、きちんと説明できるように心がけたいですね。

※猟師さんに聞いてもお肉の素性がよくわからなかった場合、ゆでこぼしして煮る料理に使うことをおすすめします。

トリミング

猟師はお肉屋さんではないので、どんなに気をつけていても毛や砂利が肉についてしまったり、食べるにはおいしくない余分な筋膜や脂肪がついたままだったりします。

  • 毛などがついて汚れている場合はナイフで切り取ってください。(水で洗い流すと汚れが広がってしまうことがあるので)
  • 表面に白い薄い膜がある場合、膜と肉の間にナイフを入れ、膜を剥がしていきます。(表面の細かい汚れが筋膜と一緒に取れてきれいになります)
  • 大きな筋(すじ)がある場合、筋は硬く焼く料理の場合は切り取ってください。(よく煮る場合、コリコリと食感のアクセントになっておいしいので取らなくてもいい場合もあります)

もらって中を確認せずに冷凍してしまうと、砂利がついてままだったりするのでなるべく早く状態を確認してくださいね。

包丁で切るポイント

包丁で切るときは繊維の方向に対し直角で、繊維を断ちきるように。
お肉は細長い筋肉の繊維が集まってできています。繊維と平行に切ってしまうと固くなります。

これ、ほんとに天と地ほどの差があるのでものすごく重要!!

実はどのお肉にもいえることなので、「肉 切り方」とかで検索するといろんなお肉屋さんが情報発信しています。

焼く・煮る

おいしくいただくには、部位ごとのやわらかさを把握すること。やわらかさランキングは以下(経験値による個人的なランキングとなります)

ヒレ>ロース>モモ>バラ>カタ>ネック>スネ…

焼いて食べるならバラまでかなーと個人的に思います。それ以降は煮る料理、もしくはミンチへ。※薄く切る・筋を取り除くなど手間をかければどの部位も焼いて食べられなくはないです。

焼いて食べるなら熟成でやわらかく

焼いて食べる場合、かたくて噛み切れないお肉より口入れた瞬間にとろけるほどやわらかいとおいしいですよね。

やわらかさを増す方法は…

  • 死後硬直?で獲れたてはぶりぶりした食感、最低2日はおいて。
  • 筋引きは入念に
  • なるべく薄く切る

冷蔵庫で保管する場合、トリミングした後キッチンペーパーを2・3重に巻いてビニール袋へ入れ、チルド室へ。

血がにじむので最低でも毎日キッチンペーパーを交換、1週間ほどおくと多少やわらかくなります。

家庭用の冷蔵庫では温度管理が難しいので、変なにおいがしたり、肉の表面がねっぱる場合はくさっているかもしれません。あきらめきれない人は肉の表面をこそげとって中心部だけ食べてください(自己責任で)

10日ほどおくのがベストなようですが、くさってしまうのが怖いので我が家では1週間以内に食べてしまうことがほとんどです。(1週間過ぎそうだったら冷凍庫へ)

おすすめ料理は、ロースを厚めに切ってバター醤油で炒めるだけ。

シカ肉は特に高タンパク低脂質、ささみと同じ性質を持っています。焼きすぎると固くなってしまうのでご注意を。もともとの脂質は低いので、バターやオリーブオイルなど油を足すとおいしいし、罪悪感も低くてすみます。

ハツやレバーなどの内臓はあしがはやいので例外!!
熟成せず獲れたて(1・2日以内)で食べてください。

煮るならゆでこぼしすべし

煮る場合、獲れたてでも冷凍して時間がたってしまってもあまり変わりない気がします。
煮る料理のポイントは「あくがたくさん出るので、ゆでこぼししてから調理」

  1. 大きな鍋に水を張り、ぐらぐら沸騰するまで火にかける
  2. 肉を食べるサイズに切って、沸騰した鍋に入れる
  3. 肉が入ると温度が下がるので、再びぐらぐら沸騰したら火を止める。
    あくがおそろしく出るので吹きこぼれないように注意!
  4. ざるに煮汁ごと開け、流水で肉を洗う
  5. 水を切って下処理は完了

おすすめ料理は、ネックやすね肉を薄く切って牛丼風の味付けに。

細かいトリミングや熟成が面倒な人、はじめてシカ肉を食べる人、猟師さんに聞いてもどんな肉かよくわからなかった人は、すぐに調理できてゆでこぼしで洗える、くさみもある程度消せるので煮物がやりやすいです。

くさみがない若い固体でゆでこぼしすると味がなくなってしまうことがあります。お肉の状態と何の料理にするか、食べる人の好みなどでゆでこぼしするかどうか調整してくださいね。

ほかには、(私はやったことはありませんが)牛乳につけてくさみを消す方法があるようです。

シカは脂がすぐ固まるのでアツアツで食べて

シカの脂は融点が高いので、冷めるとすぐに固まってしまいます。バラなどの脂を多く含む部位を食べるときは焼き肉やどんぶりにするとおいしく食べられます。

その他おすすめの食べ方

フードプロセッサーという道具を手に入れてから、ジビエとミンチの相性がいいことに気づきました。

部位問わず、ガパオライスにしてもいいし、ギョウザもおいしい!!市販の挽肉と比べると噛み応えがあり、味がしっかりしているので「肉、食ってる」感がとてもありおすすめです。

生で食べない!!

過去にシカの刺身でE型肝炎を発症した例があったそうです。
豚と比べればE型肝炎のリスクは少ないですが、野生動物なのでどんなリスクがあるかわかりません。

ルイベやマリネも含め、生食はおすすめしません

まとめ

「ジビエは臭くて、かたくて、二度と食べたくない」というイメージは正しい調理方法とその個体の個性を知らないまま、塊の肉だけが出回ってしまうことで起こるんだと思います。そうならないように、せっかくの命なのでおいしく頂いてほしい。

野生動物のお肉をもらったら、どんな肉か確認し、そのお肉にあった調理方法で料理してあげてください。
あげる人ももらった人も参考にしてみてくださいね。

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA